1曲入魂

バンドマンこそ聴くべきベランパレードのラブソング「スクラップインマイルーム」

ベランパレードのスクラップインマイルーム

バンドをしていた人はかつて、もしくはバンドをしている人たちは今、とにかく生きることに精一杯なはずだ。バイトにバンドに恋に追われ、疲れ果てて帰ってくる汚い家。その家にはスクラップ帳のようにポスターや切り抜きが貼られ、ゴミや脱ぎ捨てた服、様々な思い出なんかがスクラップのように積み上げられている。ベランパレードの「スクラップインマイルーム」は、そんな人たちへのラブソングだ。

スクラップには「切り抜き」や「鉄くず」という意味がある。またスクラップ・アンド・ビルドというと「破壊からの構築」「古いものを壊しそこに新しく築き上げていく」なんて意味もある。つまり、この単語自体にはあまり良い意味は無い。しかし、この曲の"スクラップ"にはきっと「思い出」「美しい」などの意味が当てはまる。

バンドというのは楽しいだけではない。「永い夏休み」のようにいつ終わるか分からない不安も付きまとってくる。そんな日々を続けていれば嫌になることも沢山ある。バンドを辞めたという人たちは、きっとそんな頃に戻りたいとは思わないだろう。しかしそんな日々の中で睨むように涙を溜めて歩く人たちの姿は、とても危うい美しさがある。たとえ溜めた涙や思い出を貼り付けていった部屋を出たとしても、その涙や思い出たちも、それらを貼り付けたその人自身も煌めいていて、だからこそ「抱きしめたい」とベランパレードは歌っているのだろう。

「あなたには足りないものばかりだけど」

「あなたしか知らない煌めきをどうぞ解き放ってよ」

と歌うこの曲は、何かを一生懸命に頑張る人全員の心に刺さるとは思うが、特に何かが足りないと自覚しながらも自分自身を表現し続けているバンドマンには、涙が出るほど深く刺さり一生抜けなくなってしまうだろう。彼らはこの曲を聴いてる誰かに「抱きしめたい」と歌ったのだろうが、聴いた誰かもベランパレードを抱きしめたくなる。そんなまっすぐなラブソングは、ベランパレードのファンだけでなく多くの人たちの心に突き刺さっていき、これからも大きな「抱きしめたい」の連鎖を起こしていってくれるだろう。

今日の入魂曲Today’s Soul Song

曲名:スクラップインマイルーム
アーティスト名:ベランパレード
概要:2013年、夏。宮崎在住の3人が組んだロックバンド。2016年、夏。サポートを経て、kota kamimuraが加入。

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あずま はな

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音楽や映画、心理学が大好きな典型的文系。音楽はロックやレゲエ、ヒップホップ、エレクトロ、民族音楽など幅広く嗜む。

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