「名古屋の宝」と評されるバンドがいる。
2002年に結成され、幾度かのメンバーチェンジを経つつも15年以上活動を続けている6EYESだ。ツチヤチカら(Vo.&Key.)のハードロックが基本にある音楽性は長年変わらないものの、常に挑戦を続ける彼ら。これまでも、ハードコア・ニューウェーブ・ポストパンクなど、幅広いジャンルの要素を楽曲に盛り込んできた。そんな6EYESが、2016年に名古屋のヒップホップレーベル・JET CITY PEOPLEからリリースしたアルバム「TABLE」。呂布カルマ・永見恵利・THE ACT WE ACT&6EYESの元メンバー佐藤慧といったゲスト陣も豪華で、見所だらけの音源だ。各所にヒップホップのエッセンスを散りばめ、バンドの新しい顔を見せたアルバム。ただその1曲目にある「パーティの帰り道は真顔で」は、非常に6EYESらしい楽曲だ。
彼らは“非日常と現実の狭間”を表現するのがとても上手い。
楽しげで軽やかなピアノから始まり、突然ノイジーなバンドサウンドに飲まれるイントロ。その名の通り、騒がしかったパーティのその後を様子を歌っている。酔いの醒めかけた、我に返る寸前のクラクラする時間。この今が夢なのか現実なのか、分かりたいような分かりたくないような。耳を突くようなギターに、重たくも跳ねるベース、淡々とリズムを刻むスネアの音。全てが合わさったサイケデリックな世界観が、余計にボーカルの気だるさを際立たせる。
特に行きたくもなかったパーティの帰り道。
“こんなところに来ているコイツらと自分は違うんだ”と言い聞かせながら、自分の卑屈さを薄々感じ取っている。
フワフワとした感覚の中で、見え隠れしている認めたくない現実の自分。
「何もない自分を認めるのは それも勇気がいるよ」
きっとパーティに来て、その事実が分かってしまったのだろう。
世間の人たちは、バランス良くどうにか上手に生きている。
でも自分は、騒ぐだけのパーティでさえノリきれずにいるのだ。
思い出したくないのに、思い出しそうな。忘れてしまいたいのに、いつまでも覚えていそうな。
何もないはずだが他人とはどうも違う自分に、落胆しつつもアイデンティティーを感じている。
非日常の中で、チラチラと顔を見せるいつもの日常。
どうにも説明のつかないこの瞬間が音楽になったのが、「パーティの帰り道は真顔で」だ。
やりきれない、噛み合わない。底に溜まって淀みきった現代の鬱憤。
パーティなんかじゃなくても、しこたま酒でも飲んで、どうにもならなくなった時。
行く先も決めず、ダラダラと夜の街を歩きながら聞きたい1曲だ。
今日の入魂曲Today’s Soul Song
曲名:パーティの帰り道は真顔で
アーティスト名:6EYES
概要:名古屋の4人組ロックバンド。