夏というのは、様々なことがある季節だ。夏祭りに音楽フェス、そこに付随する恋や出会い、別れ。だからこそ、次の秋を匂わせる金木犀(きんもくせい)の香りがする夜は、そういった思い出たちを蘇らせる。おそらく、きのこ帝国の「金木犀の夜」は、そういう蘇ってきた青春たちを思う夜の歌だ。
この曲は最初の歌詞で
「金木犀の香りを辿る」
と出てきて、そこからはずっと電話をかけるかかけないか、会うか会わないか、と昔の恋人との思い出を消そうとしても消せない女性の気持ちを歌っている。
昔の恋人や好きだった人に電話をしたくなったり会いたくなるという夜は誰にでもあって、大体そんな夜を「過去に囚われている」として否定的に捉えている。しかし、きのこ帝国が歌うように、季節がめぐり金木犀の香りがするうちは「あの頃の2人は時が経っても消えやしない」。思い出さないようにしても、コンビニのアイスなんかでさえ思い出を孕んでいる。だから、その感傷的な思い出が蘇ることに抵抗など無意味なのだ。
歌詞の中の女性は、思い出の蘇りに抗いつつも、忘れられないことを受け入れている。きっとこの歌詞できのこ帝国は、美しい思い出にすがることは決して悪いことではなく、むしろ大事にしていきたいという思いを強く表現したのだと感じた。だからもし現在、昔の綺麗な思い出に苦しむ人がいるのなら、きのこ帝国の「金木犀の夜」を聴いてみてはいかがだろう。きっと美しい思い出を受け入れて、大事にしていけるようになるはずだ。
今日の入魂曲Today’s Soul Song
曲名:金木犀の夜
アーティスト名:きのこ帝国
概要:佐藤千亜妃(Vo/Gt)、あーちゃん(Gt)、谷口滋昭(Ba)、西村“コン”(Dr)のメンバーから構成され、ポストロック、シューゲイザーに影響を受けたサウンドが特徴の4人組バンド。