1曲入魂

大人と子供の狭間を歌う羊文学「ドラマ」

羊文学「ドラマ」

20歳前後の女の子というのは、いわゆる思春期よりも微妙なお年頃である。女子高生というだけで華やかだった時代を過ぎ、大人にも子供にもなりきれない…そんな微妙な立ち位置で、時にはエモーショナルな気分になってしまうものだ。

平均20歳前後のメンバーで構成された、羊文学というまさにそのお年頃な女の子たちの「ドラマ」という曲がある。この曲は最初から

「青春時代が終われば 私たち、生きてる意味がないわ」

というインパクトのある歌詞から始まるが、この一節で惹かれる女の子は多いはずだ。なぜなら、その年頃の女の子特有の気持ちがこの歌詞に全部詰まっているからだ。

日本には「大和撫子」なんて言葉があるぐらいだからか、好まれる女性は純粋無垢で可憐な人だ。女子高生なんてその最たるもので、純粋無垢にただ生きているだけで、ドラマのようにキラキラした日々を過ごす。そんな少女達は傍からみればみんな可憐で美しく見える。しかし、卒業すればそんなブランドを脱ぎ捨てて社会に出ていき、汚いことも悪いことも覚えて「純粋無垢」「可憐」とは程遠くなっていく。そんなキラキラとは程遠い日々と今までのギャップを思えば悲しくなることもあるが、それでも進んでいかなければいけない。だから、何か譲れないものを大切に守ることでしか進んでいけない。この曲ではそんな女の子たちの危うい日々を、シューゲイザーのアンニュイなメロディに乗せて表現しているように感じた。

「女の子の気持ち」というのを歌ったガールズバンドの曲は山ほどあるが、羊文学の「ドラマ」ほどリアルで鮮明に表現している曲はないだろう。女であることを武器にしつつも決して男たちには埋もれないサウンドは、彼女たちがこれからのバンドシーンを担っていくことを感じさせる。今後の彼女たちの活動に、きっと若い女性のみならずたくさんのファンが注目するだろう。

今日の入魂曲Today’s Soul Song

曲名:ドラマ
アーティスト名:羊文学(ひつじぶんがく)
概要:2012年、5人組コピーバンドとして結成。受験のための活動休止と数回のメンバーチェンジを経て、17年2月に現在のメンバーとなる。東京都、下北沢を中心に活動。

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あずま はな

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音楽や映画、心理学が大好きな典型的文系。音楽はロックやレゲエ、ヒップホップ、エレクトロ、民族音楽など幅広く嗜む。

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